善意はある、これをもっと活かすには。
■3.11の震災後、被災者のために何ができるのか、自分の持つ技能を役立てるにはどうすればよいのか、と自分自身に問いかけている鍼灸師は多いと思う。つまり鍼灸という専門的技能を持った鍼灸師が医療職の一人として、被災者の支援に貢献したいと考えているのである。
■しかし、現実にボランティア活動として開業鍼灸師が被災地へと出かけるには多くの困難を伴う。他の医療職が日常の業務の一環として派遣されるのとは違い、開業鍼灸師の場合、自己負担が原則となる。もちろんボランティアは自己完結型が原則となるから被災地までの交通費、移動費、宿泊費、飲食費、雑費などは自己負担となるが、その困難は決して経済的な理由だけではない。基本的に開業鍼灸師はチーム医療の体制をとっていない。そのため自分がボランティアに行ってしまうと診療を行うものがいなくなり、当然のことながら患者さんに迷惑をかけてしまう。それが継続的なボランティア活動を妨げる理由の一つにもなっている。
■鍼灸・マッサージ師の被災者への思いはマグマのように存在している。
その証拠に今回、三輪正敬氏の立ち上げた「災害鍼灸マッサージプロジェクト」に登録し、活動した鍼灸・マッサージ師の404名(5/12現在)という人数をみれば明らかだ。この「災害鍼灸マッサージプロジェクト」は、私たち鍼灸師、マッサージ師の被災者に対する熱い思いを、うまくすくい上げ、活かし得た貴重なシステムといえる。もちろん、ここに示された鍼灸・マッサージ師の情熱は氷山の一角にすぎない。これからは開業鍼灸師がボランティア活動を継続できるような、経済的そして代診不能の困難さを克服した新しい柔軟なシステムが求められ、必要になるだろう。
■このシステムについて宮城県南三陸町の被災地で実際に医療活動をされた、東京大学大学院医学系研究科・形成外科医の中川崇氏は次のように報告している。
「一人の派遣者に長期滞在を求めて疲弊させてしまう病院やNPOが多い中、短期間で人を入れ替えることで派遣者の負担を減らし、それがまた次回の派遣にもつながった」
(週刊医学界新聞・増刊号5月10日号 shinbun@igaku-syoin.co.jp
■また、明治国際医療大学・鍼灸学部教授の今井賢治氏はAMDA医療ボランティアチームの一員として活動した経験から「調整員」の重要性について報告している。
「調整員は、スタッフが現場についてからの動きの調整・把握と管理、他団体との事務的な連携、必要物品の調達、現場と本部との情報伝達、現場での問題処理などなど、大きな役割を担い、調整員のマネージメントがあってこそ医療スタッフは安心して活動に没頭できました」そして「鍼灸師や柔道整復師、あんま・マッサージなどが調整員として活動することは当然可能です」とその役割を紹介している。(http://blogs.yahoo.co.jp/ktkbd382)
■鍼灸ボランティアにこのようなシステムを活かすにはどうすればよいだろうか。
今回の「災害鍼灸マッサージプロジェクト」では、代表とそれに近い人々が調整員の役割も兼ねたと思われる。今後の鍼灸ボランティアでは医療スタッフだけではなく、この「調整員」という重要な役割の強化も課題になるだろう。
(AMDA:アムダ 世界各国で起きた災害の医療支援に取り組む特定非営利活動法人)
■ところで日本鍼灸師会はHP(http://www.harikyuor.jp/)に鍼灸施術ボランティアマニュアルを掲載している(日鍼発第2号 平成23年4月22日)。その内容は4章から構成されている。
1.被災地、避難場所のボランティア支援の基本的な注意事項について
2.被災者の健康を守るための基本的知識
3.被災地、避難場所で活動するボランティア鍼灸師の方への知恵袋
4.鍼灸施術ボランティア活動の基本的臨床能力について
上記の1、2、3章はすべて他サイトからの転載である。そして、4章の中では施術に使用する鍼(バイオネックス 0.3)と取穴部位(6箇所以内)を限定している。たとえば「施術は円皮鍼を最大6箇所以内とする」というように。
実際の被災地でボランティア活動する鍼灸師の方々は、このマニュアルを読んでどう思うだろうか。日本医師会をはじめとする法人の被災地への医療支援が本格化する中、日本鍼灸師会の責任はきわめて重いといえる。
■私たちは現在、活動している鍼灸ボランティアの情報を可能な限り収集し、自分に何が出来るかについて、自分の頭で考え、自分の言葉で発言し、自分の身体で活動することがなにはともあれ必要である。
